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【朝日新聞の偏向記事を読む】百均の筆箱しか買えない?生活保護シングルマザーの嘘

2023年2月14日

ダイソーの筆箱

令和3年12月17日、朝日新聞大阪本社版朝刊に「生活保護の減額『適法』神戸地裁も請求退ける」(岩本修弥、小野大輔)

朝日新聞デジタルでは「『筆箱100均やん』長女が泣いたあの日 生活保護引き下げの果てに」

という題の署名記事が掲載された。

紳士諸兄は生活保護に関する記事や報道に接した際、マスメディアの印象操作に惑わされることなく、正しく記事を読めているだろうか。

本記事では事実を歪曲し、読者の先入観や人道的感情を利用し世論を誤った方向へ誘導させようとする朝日新聞の偏向記事を読み解く。

   

当該記事は生活保護減額訴訟で神戸地裁が請求棄却したことに関連したものだ。朝日新聞としては神戸地裁の判決は不服だったようで、原告の一人で生活保護受給者のシングルマザーの暮らしぶりを紹介し、その苦境を読者に訴えかける内容である。

本来、減額訴訟の判決に承服し難いのであれば、朝日新聞はその誤りを事実に基づき反証すべきで、決してセンセーショナルな記事で論点をすり替え、反論の姿勢を示すものではない。権力の側でなく、民衆側に立脚することにしか己の存在意義を見出せないのか、ジャーナリズムの劣化を感じざるを得ない。「ジャーナリズムの堕落や退廃は、事実の無視、あるいは意図的歪曲からまず始まる」とは、本田勝一氏のおことばだが、…さすが筋金入りの赤新聞である。

閑話休題。

生活保護費引き下げの影響は本当か

記事によると尼崎市で生活保護を受給しているシングルマザーA(52)は2010年から記事が掲載された2021年まで10年以上生活保護を受け続けている。

シングルマザーAが生活保護費の引き下げの影響を痛感したのは6年ほど前(2016年)で、長女(17)が中学校に入学するときであったと主張しているが、ただの妄言である。その根拠となるシングルマザーAの主張を記事から引用する。

制服は、知人のお下がりを譲ってもらうはずだったが、学校再編で一新され、10万円近い出費に。体操服の替えや体育館シューズを買えないまま入学式を迎えた。弁当には缶詰の果物を小さい容器に入れて添え、見た目を華やかにする工夫などもしていた。

岩本修弥、小野大輔「『筆箱100均やん』長女が泣いたあの日 生活保護引き下げの果てに」朝日新聞2021-12-16朝日新聞デジタル

引用の通り、10万円近い出費の原因は生活保護費減額の影響では無く、学校再編の影響である。シングルマザーAは生活保護費の減額では無く、学校再編の影響を痛感するべきである。

ここで、記事から読み取れる朝日新聞の伝えない生活保護の不都合な真実を3点列記する。

①シングルマザーA、生活保護で実は月手取り26万8千円

②制服など「10万円近い出費」は実は5万円の出費

③筆箱百均やけど、実は学用品費毎月4290円支給

2016年当時のシングルマザーAの世帯構成はシングルマザーA(40代)、長女(中1)、長男(小学生)の3人世帯。※1

生活保護費は年齢、世帯人数、居住地によって決まり、2016年当時、尼崎市のシングルマザーAは生活保護で最低生活費として月手取り268,420円の生活が保証されており、年間の正確な数字だと3,253,480円になる。

生活保護は最低生活費を保証するもので、収入がある場合は最低生活費から収入を引いた額が支給される。そのため、児童手当や児童扶養手当などを引いた額が支給される。しかし、パートなど勤労収入に関しては最低15,000円/月の控除があるので働いていれば、生活費は少なくとも控除分は増える。

シングルマザーAは生活保護で月手取り26万8千円、可処分所得325万円の生活を送っているが、その事実を朝日新聞は記事には記載しない。2019年国民生活基礎調査によると2018年のシングルマザーの平均所得は306万円、2015年だと270.1万円であり、生活保護費がそれらを上回っているという矛盾を記事に書くわけにはいかないのだ。

朝日新聞の記事ではシングルマザーAは制服代などで10万円近い出費となり、体操服の替えや体育館シューズを入学式までに買えなかったことを生活保護費引き下げの影響としてあげているが、生活保護を受給している母子家庭が困窮しているという前提そのものが誤りである。

制服代「10万円近い出費に」は嘘

そして、「制服は、知人のお下がりを譲ってもらうはずだったが、学校再編で一新され、10万円近い出費に。」と主張しているが、本当は10万円ではなく5万円のはずで虚偽記載である。と言うのも、生活保護家庭には毎月の生活保護費とは別に中学入学の際には入学準備金が当時で実費上限47,400円(現在は81,000円)支給されている。これが朝日新聞の伝えない不都合な真実②『制服など「10万円近い出費」は実は5万円の出費』である。

ちなみに、本来15万の出費が10万になったとの見方もできるが、制服や体操服等入学前に必要な品一式揃えても15万円に至らないのが現状だ。というより尼崎市の公立中学校は10万円もしない。

本当は10万円近い出費が入学準備金で5万円の出費になったはずである。そもそも、制服だけでは10万円もせず、お下がりの制服を譲ってもらっていても10万円が浮いたわけではない。

尚、本件に関してモハールオピニオン上で別途記事を掲載するので、参照されたい。

シングルマザーAは家賃55,000円を引いても生活費は毎月20万以上あり、それに加えて入学準備金47,400円が支給される。記事からはシングルマザーAの家計管理能力の欠如が窺える。

筆箱百均やけど、実は学用品費毎月4290円支給

そして、朝日新聞の伝えない生活保護の不都合な真実③ 『筆箱百均やけど、実は学用品費毎月4290円支給』について記事を引用し考察する。

ある日、帰ってきた長女が泣いた。原因は、お気に入りの筆箱を見た同級生の言葉だった。「それ、百均やん」。長女は「遠回しに貧乏をからかわれた」と感じて不登校になり、17歳の今も、家に引きこもる。

岩本修弥、小野大輔「『筆箱100均やん』長女が泣いたあの日 生活保護引き下げの果てに」朝日新聞2021-12-16朝日新聞デジタル

「それ、百均やん」と指摘している時点でお互いに100均ユーザーであり、本当に貧乏を揶揄う意図で言ったのか大変疑わしい。恐らく、そのような意図はない。

私も百均ユーザであり、百均は貧困層のみ利用するわけではないが、両者とも貧困児童だと推察される。同級生は長女の百均の筆箱を見て、長女が自分と同じ貧困層であると属性判断し「それ、百均やん」と言ったか、深く考えず単に百均で以前見たことがあり、そう発言しただけだ。

そもそも、尼崎市は保護率が4 .04%(平成30年4月)と全国の指定都市・中核市ワースト4位であり、生活保護受給者の多い自治体である。また、尼崎市の就学援助利用率は25.1%(平成26年度)と、実に児童の4人に1人が就学援助を受けている。つまり、その同級生が貧乏を揶揄うのなら、クラスの1/4をその対象にしなければならない。また、貧乏を理由に引きこもる事が許されるなら、尼崎市の児童の1/4がその資格を有する。長女の言い分は実に身勝手な被害妄想に近いと言える。

また、漫然とこのエピソード読むと、生活保護家庭の子弟は生活が苦しく百均の筆箱しか買えないという印象を受けるが、事実とは異なる。生活保護では義務教育期間の児童に文房具などの学用品費という名目で教育扶助が2016年当時毎月4290円(中学生)支給されている。その他当時は毎月学習支援費も支給され、毎月手取り26万8千円から家賃55,000円引いた生活費21.3万のうち子供2人分毎月13,580円が上記名目で支給されている。

シングルマザーAが教育扶助をその本来の趣旨に則り使えば100均の筆箱を買わずとも済むはずだ。しかし、生活保護受給者の中には住宅扶助すら流用して家賃を滞納する人がいるのが現状だ。※2

元来、100円で筆箱としての機能を十分果たすんであれば、百均で筆箱を買うというのは至極合理的であり、節約として有効である。加えて、お気に入りの筆箱なら他人の言説など尚更関係ないはずだ。というより、長女の言行は百均に対する冒涜である。決して、不登校になった原因は生活保護費減額ではない。

生活保護から脱却する気のないシングルマザーの将来は安泰

そして、最後に記事を引用し、シングルマザーAの主張の是非を判断する。

女性は、高校入学前の長男(16)から言われた「オレが働いて家にお金を入れたら、もう生活保護を受けんくていいんか」という言葉も耳に残っている。「子供のいる家庭に同じ思いをしてほしくない」と訴訟に加わったが、訴えは裁判所に届かなかった。「将来が不安になるばかり。ますます厳しい世の中になっていくんでしょうね。」女性らは控訴する方針だ。

岩本修弥、小野大輔「『筆箱100均やん』長女が泣いたあの日 生活保護引き下げの果てに」朝日新聞2021-12-16朝日新聞デジタル

シングルマザーAは「子供のいる家庭に同じ思いをしてほしくない」と主張するが、笑止千万だ。逆に一生懸命働いているけれども生活に困窮しているシングルマザーには躊躇せず生活保護受け、いい意味で同じ思いほしい限りである。

とはいえ、安易に生活保護を受けることは躊躇してもらいたいものである。実際、最低生活費を超える収入を得て、生活保護を受けずに暮らしているにも関わらず、ダブルワークなどで昼と夜もと無理して働くのは良くないとシングルマザーに悪知恵を授け、ワザと仕事を辞めさせて生活保護を受給させる事例もある。

シングルマザーAは自立する気がない上、長女は引きこもっているが、長男が「オレが働いて家にお金を入れたらもう生活保護を受けんくていいんか」とまだ正常な考えを有していることが唯一の希望である。※3

シングルマザーAは「将来が不安になるばかり」と主張するが、偽りである。長男が初心を忘れずに扶養してくれればハッピーエンドだが、そうでない場合も死ぬまで生活保護を受給できる訳で、病気になっても医療費や介護費用の負担も無し。老後の資金がありませんという心配も不要だ。

以上、紳士諸兄と朝日新聞の偏向報道を読み解いた。朝日新聞の伝えない生活保護の不都合な真実を通し、朝日新聞の事実を歪曲し真実を伝えない報道姿勢がよくわかる記事であった。

結局、何が言いたかったかというと

「筆箱百均やん」と言われて不登校になった長女

仮にお下がりの制服譲ってもらえてたとしても、「それお下がりやん」て言われて、どちみち不登校になってた説

執筆者 永遠の浪人生モハール

※1…2010年時点では介護の必要な親の存在が確認できるが、シングルマザーが生活保護を受給している点から存命の場合も同一生計で無い可能性が高く、仮に同一世帯として生活保護を受給していた場合は今から算出する生活保護費に増額された金額が最低生活費として支給されるため考慮しないものとする。

※2自治体によっては代理納付で家主に直接家賃が支払われる。

※3自立観についてここでは議論しない。単純に生活保護からの脱却とする。

引用記事

岩本修弥、小野大輔「『筆箱100均やん』長女が泣いたあの日 生活保護引き下げの果てに」朝日新聞2021-12-16 朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/sp/articles/ASPDJ66VHPDJPTIL01C.html

生活保護減額訴訟に関して判決文がネットに公開されている。下記URL参照。

https://inochinotoride.org/file/211216_kobe_hanketsu.pdf

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